会議のあとに議事録をまとめる作業は、多くの担当者にとって負担の大きい後工程です。録音を聞き直し、発言者を特定し、要点だけを抜き出す一連の流れを毎週繰り返している方もいるはずです。AI議事録ツールを使えば、文字起こし・話者識別・要約・アクションアイテム抽出を会議終了直後にほぼ自動で得られます。
ただし、ツールごとに日本語精度・無料枠・連携サービス・セキュリティ要件が大きく異なります。本記事では、Notta、tl;dv、Otter.ai、Fireflies.ai、Microsoft 365 Copilot(Teams)の主要5ツールを2026年5月時点の公式情報をもとに比較します。あわせて、用途別のおすすめと、録音時に必要な個人情報保護法上の運用ポイントまで一気に整理します。
AI議事録ツールとは|2026年現在の主要機能
AI議事録ツールは、Web会議や対面会議の音声を入力として受け取り、文字起こし・要約・タスク抽出までを自動化するソフトウェアです。専業のクラウドサービス(SaaS)型と、Microsoft 365のように既存プラットフォームへ組み込まれる統合型に大別できます。読者の選定軸を整理するために、まずは備わっている機能の中身から押さえていきます。
文字起こし・話者識別・要約・アクションアイテム抽出
主要ツールに共通する機能は4つです。1つ目はリアルタイムまたは録音後の文字起こしで、2つ目は誰が話したかを区別する話者識別(ダイアライゼーション)です。3つ目は会議全体の要約、4つ目は「誰が・いつまでに・何をやる」を構造化するアクションアイテム抽出です。これらの仕上がりは、対応言語の質と要約モデルの世代によって差が出ます。
専業ツールとプラットフォーム統合型(Microsoft Copilot)の違い
NottaやOtter.aiのような専業ツールは、Bot参加または録音アップロードの両対応で、Zoom・Google Meet・Teamsなど複数プラットフォームを横断できます。一方、Microsoft 365 Copilotは、Teams会議のIntelligent Recap・要約・アクションアイテム抽出を、ライセンス所有者だけが利用できる仕様です(Microsoft 公式)。横断利用を取るか、既存のM365ライセンス資産を活かすかが最初の分岐点になります。
AI議事録ツールの選び方|5つの判断軸

「AI議事録ツールはどれが一番か」という問いに、万能の答えはありません。会議の言語・人数・連携先・セキュリティ要件によって、最適なツールが変わるからです。ここでは、筆者が比較記事をまとめるうえで重視した5つの判断軸を提示します。
日本語精度と対応言語数
英語会議が中心ならOtter.aiやtl;dvが選択肢に入りますが、日本語会議が中心なら日本語特化の語彙学習が成熟しているNottaが有利です。Notta公式によれば、対応言語は58言語、日本語と英語のカスタム語彙登録に対応しており、日英など11ペアのバイリンガル文字起こしも提供しています(Notta公式)。Otter.aiは2026年5月時点で英語・フランス語・スペイン語の3言語のみで、日本語非対応のままです(Otter.ai 公式)。
料金体系と無料プランの上限
無料プランでまず試したい場合は、各社の上限条件を見比べる必要があります。NottaのFreeは月120分・1録音3分上限、Pro($13.99/月)以上で長時間録音とエクスポートが解放されます(Notta公式)。tl;dvは録画数無制限ですがAI要約の対象は10ミーティングまでで、AIプロンプトは生涯10回までと制限が強めです(tl;dv公式)。料金は2026年5月時点の公式公表値であり、今後の改定可能性は各社の発表に従ってください。
会議プラットフォーム連携(Zoom/Meet/Teams)
Zoom・Google Meet・Microsoft Teamsの3大プラットフォームを横断するなら、tl;dvが同一ボットで対応する設計が分かりやすい構成です(tl;dv公式)。NottaやFireflies.aiも3大プラットフォームへ対応しますが、Teamsで全社展開済みの企業はMicrosoft 365 Copilotがネイティブ統合の点で優位に立ちます。
セキュリティ・データ保管・商用利用条件
エンタープライズ導入では、認証取得状況と保管地域が重要です。Fireflies.aiはSOC 2 Type II・GDPR・HIPAA準拠とAES-256暗号化を公式に明記しています(Fireflies.ai公式)。Microsoft 365 Copilotについては、GDPR・ISO 27018・EU Data Boundary準拠、およびプロンプトをモデル学習に使用しない方針が公式に説明されています(Microsoft 公式)。最新の準拠状況は導入前にMicrosoft公式の最新文書で再確認してください。
AI議事録ツールおすすめ5選|2026年5月時点の比較

ここからは5ツールを個別に整理します。各社の最新仕様と、向いているチームの像を簡潔にまとめます。情報は各社公式サイトの2026年5月時点の公表値に基づきます。
Notta|日本語会議・国内チームに強い
Nottaは日本語に強い議事録AIで、2026年5月時点でFree、Pro($13.99/月)、Business($27.99/seat/月)、Enterpriseの4プラン構成です。話者識別はFree含む全プランに搭載されており、日本企業の会議でよく使う固有名詞や社内用語のカスタム語彙登録にも対応します(Notta公式)。
tl;dv|無料枠が厚い録画ベースの議事録AI
tl;dvはオランダ発の録画ベース議事録AIで、Zoom・Google Meet・Microsoft Teamsの3つに同じボットで参加できます。Free + 有料3プラン($10/月〜)構成で、年払いなら40%オフです。ただしFreeは録画が3か月で自動削除され、AI要約は10ミーティングまでフル要約・以降は冒頭10分のみという制限があるため、長期保存目的なら有料化が前提になります(tl;dv公式)。
Otter.ai|英語会議・米国SaaSとの統合
Otter.aiは英語会議の文字起こし精度に定評があります。2026年5月時点でBasic(無料)/ Pro($8.33/user/月、年払い)/ Business($19.99/user/月、年払い)/ Enterpriseの4プランで、Basicの月間文字起こし上限は300分、AI Chatのクエリ数は20回/user/月です(Otter.ai公式)。OtterのAPIとWebhooksはEnterpriseのみの提供で、外部連携を全社展開する場合は上位プランが必要になる点に注意してください。
Fireflies.ai|営業・CRM連携を重視するチーム向け
Fireflies.aiは100以上の言語で文字起こしに対応し、営業・カスタマーサクセス向けのCRM連携が強みです。2026年5月時点の年払い価格はFree $0、Pro $10、Business $19、Enterprise $39(ユーザー/月)で、Freeでも文字起こし回数は無制限ですが、ストレージは800分/seat、AI要約は機能限定です。SOC 2 Type II・GDPR・HIPAA準拠とAES-256暗号化を公式が明記しているため、規制業種の社内検討にも乗せやすいツールです(Fireflies.ai公式)。
Microsoft 365 Copilot(Teams)|エンタープライズ統合型
Microsoft 365 Copilot Businessは、年払いで$18/user/月(2026年6月30日まで)、以降は$21/user/月への改定が予告されています(Microsoft 公式)。Teams上でのIntelligent Recap、会議要約、アクションアイテム抽出はCopilotライセンスに含まれます。ただしM365 Business Standard($12.50/user)などのベース契約が必須のアドオン製品です。さらに機密会議のE2E暗号化やリアルタイム翻訳キャプションなど高セキュリティ機能を求める場合は、別ライセンスのTeams Premium($10/user/月)併用が想定されます(Teams Premium公式)。
5ツール比較表(2026年5月時点・公式公表値)
| ツール | 主な強み | 無料プラン | 有料プラン(税抜・月額) | 対応言語数 | 主な連携先 |
|---|---|---|---|---|---|
| Notta | 日本語精度・話者識別 | 月120分・1録音3分 | Pro $13.99 / Business $27.99/seat | 58言語 | Zoom / Meet / Teams 等 |
| tl;dv | 横断ボット・無料録画 | 録画無制限(3か月で削除) | $10〜(年払い40%オフ) | 多言語(公式に詳細記載あり) | Zoom / Meet / Teams |
| Otter.ai | 英語精度・米国SaaS連携 | 月300分 | Pro $8.33 / Business $19.99(年払い) | 英・仏・西の3言語 | Zoom / Meet / Teams、API(Enterprise) |
| Fireflies.ai | 100言語超・CRM連携 | 文字起こし無制限/800分保存 | Pro $10 / Business $19 / Enterprise $39(年払い) | 100以上 | Salesforce / HubSpot ほか |
| Microsoft 365 Copilot | M365統合・E2E要件 | なし(別途M365契約必須) | Business $18(2026/6/30まで)→$21 | M365対応言語に準拠 | Teams / Outlook / Word ほか |
(※価格は各社公式サイトの2026年5月時点の公表値で、年払い・月払い条件は各社のページで再確認してください。)
用途別おすすめマトリクス|あなたに合う1本の選び方

ここまでの仕様比較を、会議スタイル別のおすすめに整理します。読者の職場の典型シーンに合わせて選んでください。AI業務活用の生産性向上は、ツール導入だけでなく運用設計とセットで効果を最大化できます(参考:ChatGPT業務活用で年収56%アップ?職種別年収インパクトランキング2026)。
日本語社内会議が中心なら
筆者の整理ではNottaが第一候補です。理由は対応言語58言語のうち日本語に厚みがあり、話者識別がFreeでも使えるため、議事録初心者でも社内導入のハードルが低いからです。中堅以上のチーム展開ならBusinessプラン($27.99/seat/月)で長時間会議とエクスポート制限を解消できます(Notta公式)。
グローバル英語会議が中心なら
英語会議が主体ならOtter.aiが選択肢の中心です。日本語に対応しないため社内議事録の主軸には向きませんが、米国SaaS担当者との打合せや英語IRの記録には使い勝手が良い構成です。Otter APIでの社内基盤連携が必要ならEnterprise契約が前提となる点を踏まえてください(Otter.ai公式)。
営業・カスタマーサクセスでCRMに記録したいなら
商談内容をSalesforceやHubSpotに記録したいチームには、Fireflies.aiが向きます。SOC 2 Type II / GDPR / HIPAA準拠やAES-256暗号化を公式が明記しているため、規制業種の社内稟議でも要件チェックを通しやすい構成です(Fireflies.ai公式)。
Microsoft 365 を全社導入済みなら
すでにTeamsとOutlookを全社展開している企業は、Microsoft 365 Copilot(Business $18/user/月、2026年6月30日まで)が現実解になります。Teams Premiumを併用すると、感度ラベル自動適用やE2E暗号化、ウォーターマークなど機密会議向け機能をあわせて利用できます(Teams Premium公式)。エンタープライズ全体のAI導入戦略を整理する際は、自律型AIエージェント完全ガイド:2026年エンタープライズ導入の実態と展望もあわせて参照してください。
録音・文字起こしと個人情報保護法|導入前に整えるべき同意フロー
AI議事録ツールは便利ですが、録音には法的・倫理的な配慮が欠かせません。本セクションは法律相談ではなく一般的な解説ですが、運用設計のチェックリストとしてご活用ください。
録音音声は個人情報に該当する場面がある
個人情報保護委員会のガイドラインQ&Aでは、通話・会議の録音音声から特定個人を識別できる場合は、録音音声が個人情報に該当しうると整理されています(個人情報保護委員会)。社内会議の発言者の声や名指しの場面を含む録音は、原則として個人情報として取り扱う前提で運用設計を組むのが安全です。
利用目的の通知・同意取得の運用例
個人情報取扱事業者には、利用目的の通知または公表の義務があります。AI議事録ツールでSaaS事業者への第三者提供を伴う運用では、目的・保存期間・提供先を明示して同意を取得する運用が望ましいと整理されています(個人情報保護法第27条および個人情報保護委員会のガイドラインQ&A)。実務的には、会議招集メールへの一文追加、会議冒頭での口頭通知、社内規程への明記の3点を最低限のセットとして整える企業が多い印象です。
FAQ
Q1. AI議事録ツールは無料でもどれが使えますか? A. 無料枠を比較すると、tl;dvは録画数無制限(3か月で自動削除)、Fireflies.aiは文字起こし回数無制限+800分のストレージで使い始めやすい設計です。Nottaは月120分・1録音3分、Otter.aiは月300分(英語等のみ)が無料枠です。日本語会議の試用にはNotta、長時間英語会議ならtl;dvが向きます(tl;dv公式)。
Q2. AI議事録の日本語精度はどう比較すればよいですか? A. 公開ベンチマークが各社で揃っていないため、自社の会議録音をサンプル化して試用比較するのが現実的です。日本語特化の語彙登録に対応するのはNottaで、対応言語は58言語と公表されています。Otter.aiは英・仏・西の3言語のみで日本語非対応のため、日本語会議では候補から外すのが基本です(Otter.ai公式)。
Q3. Fireflies.ai のCRM連携で何ができますか? A. 公式情報によれば、SalesforceやHubSpotなど主要CRMと連携し、商談録音から要約やアクションアイテムを記録できます。Free $0からProは年払い$10/user/月で、SOC 2 Type II / GDPR / HIPAA準拠やAES-256暗号化を公式が明記しているため、規制業種でも要件確認をしやすい構成です(Fireflies.ai公式)。
Q4. AI議事録ツールのセキュリティはどこを確認すべきですか? A. 最低限チェックすべきは、(1)認証取得状況(SOC 2 / ISO 27001等)、(2)データ保管地域とEU Data Boundary対応、(3)プロンプトや録音をモデル学習に使うかの方針、(4)暗号化方式、の4点です。Microsoft 365 CopilotはGDPR / ISO 27018 / EU Data Boundary準拠で、プロンプトをモデル学習に使用しないと公式が説明しています(Microsoft 公式)。
まとめ
AI議事録ツールの最適解は、会議の言語・規模・連携先・セキュリティ要件によって変わります。日本語社内会議ならNotta、グローバル英語会議ならOtter.ai、CRM連携を重視する営業現場ならFireflies.ai、Microsoft 365を全社展開済みならCopilot(Teams)が現実的な第一候補です。tl;dvは横断ボットと無料枠の厚さで、まず試したい個人・小規模チームに向きます。
導入時は、料金は2026年5月時点の公式公表値で再確認し、録音には個人情報保護法上の利用目的通知と同意取得をセットで運用してください。まずは自社の会議1件分を試用録音し、用途別マトリクスに沿ってツールを絞り込むところから始めるのがおすすめです。
